奈良 法隆寺・西院伽藍「墨壺」
お習字の時の「硯(すずり)」のようなものを想像してしまいそうですが、実はこれは工具の名前です。
主に建築現場で使われる「数メートルの長い線を引くための道具」です。
壺の様になっている所に墨を含ませた綿を入れ、それをインク代わりにするので、こう呼ばれています。
どうして法隆寺の話題で墨壺かと言いますと、法隆寺に使われている木材には、墨壺で墨の線を引いたと思われる跡が発見されています。
この発見により、墨壺は600年代には、日本で使われていたということが判明し、つまりこれは世紀の大発見となっています。
日本最古と云われる法隆寺の墨壺
実は、非常に残念なことに法隆寺の創建当初に使用された墨壺は現存していません。
しかし、上述の「墨壺で引いた線」は現存しており、これは日本最古の線になるそうです。
もし、法隆寺に「墨壺」が残されていたのであれば、間違いなく日本最古の墨壺となったハズです。
墨壺の起源
この墨壺は、古くは「古代エジプト」で生まれ、中国で改良され、仏教や、建築様式などと共に、日本に渡ってきたようです。
法隆寺は今でこそ「日本最古」という冠がつくことが多いお寺ですが、建てられた600年代には「最先端」だったわけですね。
長らく建築界になくてはならない存在だった墨壺ですが、粉チョークが出回り始め、更に1990年代にレーザー光線で線を引く装置が利用されるようになってから、あまり使われなくなってきたようです。
しかし、現在でもなんと!墨壺を使用している建築会社もあるようです。
墨壺は、使い方によっては、現在の技術に匹敵するぐらい正確に線引きができます。
他にもチョークとは違って簡単に消えにくいので、状況に応じて現代でも使用されています。
墨壺の部位の説明
- 池・・布に含ませた墨を入れる部分です。
- ケイ部
- 壺車・・線引きするのに欠かせない部分です。
- 廻手・・壺車を支えるための重要な部分です。
- 尾部
- 車穴
- スカシ
- 頭部
- 壺口・・この部分から糸が出ます
- 壺糸・・墨の付いた糸です。
- カルコ・・この部分を部材に刺して固定させます。
線を引く際は、墨壺の筐体を持ちながら引きます。
墨壺で線が正確に引ける最大の理由は「糸」が付いているからです。
糸は引っ張れば直線になります。
1000年以上経った現在でも、古代で生み出された道具が現在でも現役で使用されている事実が本当に信じられぬぅぁい。